初めて見た瞬間、「美人である。」と同時に―――「悲しい顔をする女性だ。」と感じた。 ニコ・ロビンという女性―――旅の道中で多くの人々と出会った中で、目に底知れぬ闇を秘めている。 一体どういうきっかけでこの組織に入ったのか、彼女は自分のことを語らない。 その代わり私にはない情報量を持っていて、特に歴史の話を聞いたときはとても勉強になるのを覚えている。 仕事の時はポーカーフェイスを保っているが、オフになるとたまに表情を緩めている。 私以外の人達にもそんな顔をしているのだろうか。 まだ会って間もないのにロビンさんが気になってしょうがない。 ここは、彼女のいるべき場所ではないと―――。 「ロビンさん、今・・・幸せですか?」 「どういうこと?」 「変なヤツって思われて構いません。正直な所・・・・・・貴女が心配です。」 「・・・。」 「まだまだ旅の途中ですが―――いろんな人達に会い、様々なことを教えられて来ました。  特に貴女は・・・・・・何十年も孤独を抱えているように見える・・・。」 「・・・。」 「失礼なこと言ってごめんなさい。でも・・・貴女を救いたいんです。」 窮屈な闇の中から―――・・・ という言葉を呑み込み、思わずロビンさんに背向けてその場を後にした。 もうそろそろアラバスタにいるのは今日で最後にしようと決めていたからちょうどいい。 あ〜あ・・・せっかく素敵な人に会えたのに・・・・・・何をやっているんだろう私は・・・。 「(絶対嫌われたよなあ・・・私)」 無我夢中で砂漠を歩き、ようやく海が見えたところでようやく自分の体が水分を求めていると悲鳴を上げる。 水分不足で倒れた前例があるのにまたバカをしてしまった。 出発前に何か買えばよかった―――一瞬倒れかけそうになる所で何故か奇妙な角度で、自分の体が静止した。 私の体に無数の腕が・・・生えている・・・・・・? 「それが・・・私の能力。"ハナハナの実"の力・・・。」 聞き覚えのある声に振り返ると、まさかの本人がいた。どうやら彼女も悪魔の実の能力者らしい。 マジマジとその(・・)を見ていると、ロビンさんの表情が暗くなる。 「気味悪がらないの?腕が生えているのよ?」 「いやぁ・・・腕とか生えてるよりも多くのビックリ人間に会っちゃってるので・・・・・・。」 「何かすみません。」と頭を下げると何故かロビンさんは呆気に取られた表情で立ち尽くしていた。 あれ?何か変なこと言いました? 「貴女だけよ。そんなこと言ってくれるのは・・・。」 「え?」 「風斬りさんに全てを見透かれてるようね、私は・・・。」 「嗚呼!ごめんなさい!気を悪くさせるつもりは―――。」 「あら、勘違いしないで。別に怒ってるわけじゃないのよ。」 多分、私の頭の周りには疑問符ばかりが浮かんでいるだろう。 そんな私を見てロビンさんはくすくすと笑んだ。 「ありがとう、風斬りさん・・・。でも、私はまだここでやるべきことがあるの―――。」 悲しげに笑むロビンさんだが、すぐにいつもの表情に戻る。 「運がよければまた会いましょう―――。」 初めて呼ばれた自分の名前。そしていつもと違う微笑み。 何故か不思議とまた会えるような気がして、胸が熱くなった。 闇に咲く孤高な華