セルジュニアがやたら構っている地球人が新しいタイムパトローラーのようだ。
これといって特別な能力値がない生命の短い種族に目をつけた我が子に、
本当に自分の分身であるかと疑った。
しかもその相手が女というだから益々疑問は膨らんだ。
たまたま、その女がセルジュニアと戯れている(傍から見れば襲われているが)のを見た。
ベジータやトランクスでもやっと戦えるレベルというセルジュニアに対し、
女の方が優勢だった。しかも二対一で、だ。
「子供達が世話になったな。今度は私と戦ってみないかね?」
女は一瞬顔を歪めたが、言っても無駄だろうと思ったのか、すぐに構えをとった。
ここに来て長くは経っていないというのにここまで闘えるとは本気で驚いた。
これはいい暇つぶしになれそうだ。そこでやっと彼女の名前を聞いた。
「か・・・。セルジュニアと戯れるのはいいが、私の相手もお願いしたい。」
そう言うと、嫌だと表情に強く出ていた。
セルジュニアは良くて、何故自分が駄目なんだ?
ならば弟子は、と誘ってみたが既に先客が入っていた。
あのナメック星人かと嘲笑えば、は憤怒してそのままセルに掴みかかった。
また地面に仰向けになる形となってしまったが、
悟飯に倒された以前のような怒りは不思議と湧いて来なかった。
この平和ボケしたトキトキ都でようやく、自分を満たしてくれる相手を見つけたと、
セルは楽しそうに笑った。
「やあ、。ご機嫌いかがかな?」
≪お前に会ったおかげで最悪だよ。≫
憎々しく綴ったスケッチブックを見てクツクツ笑えば、彼女の眉間に更にしわが増えた。
ああ言っている割に、こうやって闘いの相手をしてくれるのだから可愛いものだ。
闘いが終われば、はさっさとピッコロの方へ行くはずなのだが、
今では距離を置きつつ他愛ない筆談までするようになっている。
セルジュニアと比べればまだまだなのだが、これでも大きな一歩だ。
話をしていると、ここに来る以前に『波紋』という力を持っていたことや、
彼女が既婚者でもあることを知った。
出会う前のセルからすれば、どれもどうでもいい内容である。
別の世界で結婚し、幸せな家庭を築いていた彼女の意志など関係なく強制送還されたという。
何十年も経った今もの薬指には指輪がつけている。
二度と会えないと分かり切っているはずの彼女の表情には未だに幸せを浮かべていた。
その顔が、さっきまでの闘いで満ち溢れていたはず心を激しく苛立たせた。
「もし私が、」
「?」
「君の夫と子供を殺したらどうする?」
こんなことを言われれば、誰もが怒りを表すはずだった。
しかしは怒るどころか、フッと爽やかな笑みを浮かべていた。
≪なめない方がいいよ。彼は貴方が思っている以上に手強いから。≫
それは別次元にいる絶対的な安心感からなのかと思ったが、
この瞳を見てその考えは削除した。
何故そんな余裕が持てるのだ?何故怒りを抱かない?
「ククク・・・そうか・・・・・・。」
コンピューターではインプットしていなかったはずの感情。
今まで吸収してきた人間の細胞から、それは恋愛感情であることを理解した。
と闘うのは楽しい。拳と拳でぶつかり、力がぶつかり合うのはとても気分がいいが、
何気ない会話をしたり、気まぐれにの髪をいじるのも悪くなかった。
それ以上にもっと、彼女に触れたい。
セルジュニアがに構うのが今になってとてもよく分かる。
あの子たちは私の子供達だからな。