*
SCP-978(欲望カメラ)―――どこにでもあるインスタントカメラに見えるが、
SCP-978によって撮影されると、現像する写真は、撮影された被験者が何をしたかったのかを示す。
人間はもちろん、動物にも有効であると結果に出ている。
そこで私は思った。では私達人間と同様に意志を持つ金属生命体にも通用するのか、と・・・・・・。
「それは興味深いな。」
今日初めに出会ったのはサイバトロンの軍医・ラチェット。
新手のSCPかと身構えていたが、地球とは全く別の星から来たと知ってちょっぴり残念に思ったのは秘密だ。
地球外生命体であるなら口の堅そうなトランスフォーマーに話しても問題ないだろう。
―――という安易な理由だが、現にSCPの存在を知っているのはラチェットとホイルジャックだけである。
一番興味を示しているし、何より実験に協力して貰えるからね!
「というわけで最初にラチェット先生頼むよ。」
「君が映るんじゃないのかい?」
「あくまで撮影したい対象は君達だから。あ、立ったままでもいいですよ。」
「ん、そうかい?」
そう言ってニコリと微笑んだ。何この人(いや、人じゃないけど)イケメンかよ。
早速出てきた写真を乾かしてから、いざ拝見した瞬間ビシリと硬直した。
そこに映っているのは武器を構え、恐ろしいほどの満面な笑みを浮かび、武器を構えるラチェット。
今にも「スクラップにしてやるぞッ!」という声が聞こえて来そうで怖い。
もはや発声回路を切断どころではない。
「どうだい?」
「ラチェット・・・最近ストレス溜まってる?」
「ストレス?そうだな・・・自分が医師である以上、患者の面倒をみるのは当然だが、
何度言っても皆損傷してくるからな・・・今に始まったことじゃないが・・・・・・。」
「そ・・・そっか。」
これはやばいと判断し、すぐにその場から退散した。
すると見回りから戻ってきたバンブルとスパイクが目に映った。
「あっ、!来てたの?」
「まあね。」
「うわっ・・・急に撮らないでくれよ。」
「ほーんと!言ってくれたらカッコいいポーズとるのに!」
「ごめんごめん。」
「でも、どうして突然写真を?」
ちょっとね、と言葉を濁して二人の横を通り過ぎた後に写真を確認した。
ビークルモードのバンブルと彼の車内に乗るスパイクが仲良くドライブしている。
本当に仲良しなんだと柄もなく、ほのぼのとした気持ちになった。
その後、基地にいるメンバーを全員撮影した。
その写真には彼らの個々を強く表れており、ある意味ではつまらない結果となった。
(代表するものといえばクリフやアイアンハイドといった赤組である。
皆まで言わなくても分かるよね・・・?)
けれど、SCP-978が金属生命体にも有効であったことが証明されたのはいい土産だ。
そもそも財団では個人の私用でSCP-978を使用するのは禁じられており、
現像した写真を回収するのが原則。しかし私は財団に彼らを売るつもりはない。
なんせトランスフォーマーは既に全国で知れ渡っているし、
遙か遠く宇宙から来たエイリアンを隅々まで調べたいという連中はごまんといる。
でも財団には放置すれば人類が滅ぶされる危険物質や不死なる生物に最終兵器がある。
といってもSCPじゃないのだから対象するはずもないのだが、
最近財団の中ではサイバトロンやデストロンの話題で持ちきりである。念には念を・・・だ。
写真は私が処理をするとして、これから新たに撮影する対象を何にするか考えながら基地を後にした。