この宇宙には破壊された星を後片付けをする『掃除屋』がいる。
どんなに小さくても塵一つも残さない。
新たな星の生命が誕生する際の邪魔にならないように。
その破片が後に別の惑星を破壊する隕石にならないように・・・・・・。
その役割を担う存在として生まれた少女はその使命のみならず、
もはや本来の使命とはかけ離れた任務を任される汚れ役となっていた。
少女は何も言わない。
辛いだの、苦しいだのと呻かない。
余計なことも一切考えない。ただ与えられたことに従うのみ。
『情』が欠けた少女には血が通っているはずなのに、その姿は機械そのものである。
時には手合わせの相手、破壊すること以外の命令にも従う。
無表情で淡々とこなす彼女の姿を不気味がる者は少なくはない。
だが、そういう存在は地上げ屋や独裁者にとって非常に利用価値がある。
特に宇宙規模の地上げ屋として名を轟かせているフリーザ一族は掃除屋を気に入っている。
「ご苦労様です、さん。貴女のおかげで手早く終えることができました。
部下にも見習ってほしいくらいです。」
「ありがとうございます。」
頭を下げる少女の顔や声に情は含んでいないものの、不快は感じなかった。
「しかし勿体ないですね。
貴女ほどの人材がいつまでも界王神の下にいては自由に掃除ができないでしょう?
どうです?わたしの下で働く気はありませんか?」
「申し訳ありませんが、その命を聞くことはできません。」
「雇い主の言う事は絶対と聞きましたが・・・?」
「私の主はメルヘスです。主があの方である限り、他の者の下に就くことはできません。」
の中では雇い主の命令は聞いても、生みの親の権力が一番優位に立っている。
相手が宇宙の帝王であろう臆することなくそう言い切ったのだった。
***
「フリーザよ、またワシの目が届かぬ隙にあの娘を引き抜こうとしたな?
あの娘の主が何者か忘れてはあるまい。」
「それの何が問題あるというんだい、パパ。界王神は東と元大界王神の従者しかいない。
パパが言う魔人ブウによって殆どが滅んだ。ボクら一族の手にかかれば敵じゃないよ。
彼女がいれば面倒な手続きだってしなくて済むし、今まで以上に仕事もはかどるだろう。」
「まったく・・・クウラといい、兄弟考えることは同じか。」
「癇に障るが、彼女のことは兄も一目置いてるからね・・・・・・あいつだけには渡さないよ。」
兄であるクウラをそれほど嫌悪しているのか、名前を聞いただけで持っていたグラスに亀裂が走る。
同じ一族であるはずなのに何故こうなってしまったのか、コルド大王は頭を抱えた。
***
「は強いなー。パパも強いけど界王神もそれくらい強いのー?」
「ええ。」
「ふーん。」
今日の戦闘授業を終えたクリーザは興味がなくなったのか、の返答を適当に相槌をうった。
しばらくサッカーボールを腕の中で弄ぶと、その手を止めて再びを見た。「ねえ、」
「今日の仕事終わったら、また帰っちゃうの?」
「そういう契約ですので。」
「でも、パパは自分の手元に置きたいって言ってたよ?」
「そのお気持ちだけで十分です。」
クリーザが知る限り、父の要求に断る者は殆どいない。
その半数がフリーザの怒りを買わないためともいえる。
それを、フリーザに敵うはずのない少女がキッパリと断るのだから
クリーザは不思議でたまらなかった。
「はおかしいなー。パパに気に入られるなんて滅多にないのに。
ボクだってずっといてほしいよ。」
「ありがとうございます、ご子息様。」
「クリーザって呼んでよ。」
の膝の上に乗ってそう要求するクリーザにただ一言「はい」と発言した。
まだ子供だからといっても、他人に体を預けるのはそう簡単にあるものではないが、
少なからずクリーザはに心を許している。
界王すら恐れるフリーザ一族の逆鱗には絶対触れさせんと、が留め金となっているのだ。
しかし、間接的ではあるが、フリーザの悪行に手を貸しているのも事実。
本来ならメルヘス界王神が担う役目のはずなのだが、界王神が・・・・・・
ましてや元大界王神の従者がそんな汚れ役をするなどあってはならない。
代わりに白矢が立ったのが、である。
その時に、メルヘスはせめて彼女が苦しむ必要がないようにと『情』を取ったのだ。
褒められようが、恨まれようとも、罪悪感に陥ることはない。
クリーザに「笑って」と言われても、感情がこもっていない笑顔しか作れない。
今はこれといって大きな事件は起きていないが、ずっとこの関係が保たれるかは時間の問題である。
『掃除屋』は今日もまた、別の雇い主の下で箒を振るう―――。
***
その数年後にビルス様と出会う予定。
因みにフリーザ一族との関係性↓
フリーザ→最も依頼するのが多く、夢主の腕を信頼している。
コルド大王→夢主の上にいる界王神がいるので警戒しているが、
彼女なら息子二人のどちらか嫁に来てほしいとのこと。
クウラ→直接言ってはいないが夢主の腕を認めてる。
クリーザ→将来ママになってほしい。
バーダックが飛ばされた過去の時代が何年前かわかれば、
祖先のチルドとも会ってるんじゃないかな。