悟飯以外に弟子を一人作った。
トランクスが修業をつけてほしいというその人物は別の次元の地球人だった。
何故よりによって戦闘力が高い訳でもない人間なのか理解に苦しむ。
しかも女だというのだから尚更だ。
ナメック星人に男や女といった性別がない。
ピッコロが今まで見てきた女はブルマやチチ、ビーデルといった面子で、
彼の中では騒がしいイメージしかなかった。
だが、という人間は違った。
ブルマのように声を上げることもなければ、チチのように口うるさくもない。
『声』が出ないからというのも含むが、攻撃してくる拳は重く大胆だというのに、
動作は風のように静かである。(心を読める側としては問題ない)
悟飯と似たタイプのようで、
周りからすれば精神的にキツイと言われる修業にも真面目に打ち込んでいた。
ピッコロにしては珍しく、悪くないと感心するほどだ。
はこの世界に召喚される以前、ナメック星人はもちろん、ドラゴンボールが存在しない世界で、
『波紋』という力を学んでいた。
悟飯ほどではないが、あの年頃で戦闘技術を何年も重ねてきたというわけだ。
「(何か勘違いしてるようだけど私、悟空とそんなに変わりませんよ?)」
「何の話だ?」
「(年です。もう40です私)」
年齢なんてピッコロには関係のない話なのだが、内心ちょっとだけ驚いたのは秘密だ。
『気』の文字さえ知らなかったあの娘がよくここまで出来たものだ。
あとは他の奴の元で修業をするのも良し、自分のやりたいようにやれと告げた。
相変わらず丁寧な物腰でビシッと顔を下げたあの姿が今でも鮮明に残っている。
トキトキ都に集まる人の数は更に増え、いろんな音も増えて騒がしくなった。
修業を全て終えて以来、とは会っていない。
通り過ぎたタイムパトローラーの口からは、「期待の新人が大活躍」やら
「あのフリーザやセル、魔人ブウまで倒した」と話が飛び交っていた。
当然だ。自分が修業をつけてやったのだからな。
自分のことのように口端が上がる。貴重な魔族となる人材を手放してしまったな・・・・・・。
「(お久しぶりです、ピッコロさん)」
聞こえるはずのない心の声がピッコロの脳裏に響き渡る。
瞑想を止め、姿勢はそのままに片目を開けて、下にいるを見下ろした。
あれから何か月も過ぎた弟子の顔つきは更に戦士としての貫禄がついていた。
「今更オレに何の用だ?またオレの下で修業したいというのか?」
「(・・・・・・あれから色んな人達の下で修業させて貰いましたが、戻ってきちゃいました)」
語尾に星がつきそうな軽快な口調で、苦笑いを浮かべた。
「(簡単に戻れるなんて思っちゃいません。
ただ、もう少し貴方の所で学びたいという気持ちがあるんです)」
まさかの言葉にピッコロは呆気に取られた。
自分以外の者と師弟関係を結ぶのを予想していた為、驚くことはなかったが、
今までの奴らと師弟関係を解消してまで戻って来たというに柄にもなく心が震えた。
それを決して顔には出さないピッコロはただ、フンと鼻を鳴らした。
「生半可の覚悟なら、この話はなかったことにしてやってもいいぞ。」
「(中途半端な気持ちで貴方の修業を受けて今目の前に立ってると思うの?)」
「・・・・・・ちょうど退屈していたところだ。肩慣らしに手合わせに付き合え。」