*前作のグルースキン視点
グルースキンは新しい玩具を見つけた子供のようにー否、それ以上に喜んでいた。
。自分の理想である花嫁の名前。
今まで会った奴らのように口汚い言葉を吐かない。暴力を振るわない。逃げない。
光のない、時折怯えを見せる瞳。女性らしく体つきがいい。
何時間も前に出会った婚約者も魅力的だが、結婚するとしたら何方と結ぶべきだ?
―――今焦る必要はない。時間は十分にある。
片方を選んでも、我々を見届ける観客ができる。
きっと賑やかな結婚式になる。その日が来るのだと思うと楽しみでならない。
新郎新婦の衣装を作るのはいつも楽しいが、が来てからは心が弾む。
彼女がいるという空間が心地よく、グルースキンは布地に糸を通すリズムに合わせて鼻歌を奏でる。
時間が過ぎていく中、ようやく完成した『それ』を掲げてに呼びかけるが返事がない。
聞こえるのは安定した寝息のみ。
ちゃんと構ってあげるべきだったと己を叱咤した。
椅子に座ったまま寝ているの顔を軽く持ち上げる。
さらりと髪が流れ、グルースキンを映す瞳は閉じられている。
穏やかに眠るに愛しさがこみ上げ、先程出来上がったベールを彼女の頭に被せた。
彼女の髪の色が映えて、より綺麗だ。
ウエディングドレスを身に纏う姿もさぞ美しかろう。
結婚か―――と独りごちる。
式を挙げるために何人拒絶されたか、正確な数はわからない。
誰も自分の愛を受け入れてくれない。
今は側にいてくれるだが、彼女もいつ逃げ出さないか不安でならない。
そう思いたくないのに、負の感情が積もっていく。
いっそ、そうすることができないよう足を折ってしまおうか・・・・・・嫌だ、したくない。
これでは父と同じではないか。
「Darling,ずっと俺の側にいてくれ、それだけでかまわない。
君が、『彼女たち』と同じ尻軽な奴らとは違うと証明してくれ」
2018/04/28